寒いね

吐く息の

その白さ

それだけで感じられる

冬がそこにいることを

寒い

そう言ってしまえば簡単だけれど

寒いと言葉にした瞬間

この季節が少しだけ嫌なものになる気がする

だから僕は

冬らしいね

と言う

冬らしい朝

子どもを保育園に送る

ぐずる体を抱き上げて

小さな背中から

あふれんばかりに伝わる温もりを

名残惜しく見送った

それから会社へと向かう前に

コンビニに寄る

コーヒーを淹れ

道ゆく車の往来を見ながら肩をすくめて味わう

育児に追われる日々は

静かに

でも確実に

2人の時間の余白を奪っていく

だからこの何気ない時間が

僕らにとって特別な時間なのだ

妻は言う

寒いねと

だから僕は

俵万智の一つの短歌を差し出す

「寒いねと話しかければ

寒いねと答える人のいる

あたたかさ」 

妻は笑った

なるほどね!となぜか納得したようだった

2人で笑いながら同じ白い息を吐く

寒さは消えない

冬は冬のまま

でも

その真ん中に

確かに

ぬくもりがあった

何かが起きたわけじゃない

ただ

冬の朝に

コーヒーを飲んだ

それだけ

それなのに

あとから思い出すと

ああ

いい朝だったなと

思えてしまう

冬は

寒い季節だけれど

こうして

温もりを

ちゃんと隠し持っている

白い息が

ゆっくり消えていくのを見ながら

そんなことを

考えていた